ヘルパンギーナについて

ヘルパンギーナは、6月ごろから増え始め、初夏に流行のピークを迎えることの多いウイルスが原因の疾患です。 患者の90%以上が5歳以下でその中でも最も多いのが1歳児です。まれに大人も発症します。

子どもの三大夏風邪に注意

夏になると子どもを中心に患者数が増える感染症が、
「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」。
子どもの三大夏風邪と呼ばれたりもしますが、例年6月から8月にかけてそれぞれの流行がピークを迎えますので、特徴や注意点を確認し、事前の感染対策に備えましょう。

原因ウイルス

主に「コクサッキーウイルスA群」が原因で、ウイルスの型がいくつかあるので、何度もかかってしまうことも珍しくありません。

感染経路

・ヘルパンギーナにかかった人の咳やくしゃみ、つばなどのしぶきに含まれるウイルスによって感染します(飛まつ感染)。
・唾液や便に排出されたウイルスが手などを介し、口や眼などの粘膜に入って感染します(経口・接触感染)。

なお、コクサッキーウイルスはエンベロープを持たない「ノンエンベロープウイルス」と呼ばれるウイルスで一般的なアルコール除菌は効きにくいです。
そのため、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系の消毒剤が効果的です。最近ではノンエンベロープウイルスにも有効な新しい「酸性アルコール消毒剤」が開発されています。

 

ノンエンベロープウイルスとは?

ウイルスは、その構造から、大きく2つに分類されます。

ウイルスの構造は、
脂質を含むエンベロープと呼ばれる膜で包まれているもの(エンベロープウイルス)
エンベロープを持たないもの(ノンエンベロープウイルス)
があります。

消毒剤の効果は、エンベロープの有無によって異なります。
エンベロープウイルスは、消毒薬によるダメージを受けやすく、アルコール製剤が効きやすい特徴があります。
ノンエンベロープウイルスは、ダメージを受けにくく、一般的なアルコール製剤は効きにくい特徴があります。

症状

2〜4日間の潜伏期間ののち、突然39〜40度ほどの高熱が現れます。続いて咽頭痛が現れ、口腔内の奥の方に小さな水疱や発赤ができます。
この水疱は数日すると破れて痛みが生じます。2〜4日で解熱し、7日程度で治癒します。
高熱による倦怠感や口腔内の痛みなどから、食事や水分を十分にとれず、脱水になることもあります。
また、発熱時に熱性けいれんを起こす可能性やまれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎などを合併する場合もあります。なお、手足口病と異なり手や足には発疹はできません。

治療

ヘルパンギーナに対しての特異的な治療はなく、対症療法のみになります。そのため、発熱や痛みに対して鎮痛解熱薬が処方されることがあります。
また、口内炎(口の中にできた潰瘍)に対して鎮痛解熱薬で痛みを和らげたり、粘膜保護剤の軟膏などが処方されることがあります。
頭痛やおう吐、発熱が続く場合は主治医に相談しましょう。
※合併症が疑われる場合には入院での治療が必要になります。

生活や食事の面で気をつけること

生活面では水疱があるために刺激があるものや熱い飲食物は避け、喉越しの良いものを摂るようにしましょう。
柔らかく薄味の食事を工夫し、水分補給を心がけることが大切です。

  • のどに痛みがあるので、オレンジジュースなどのような刺激のあるものは避け、のどごしの良い少し冷たい飲みものがおすすめです。(例えば、麦茶や牛乳、冷めたスープなど)
  • 食べものは、刺激が少なくかまずに飲み込めるものにしましょう。(例えば、ゼリーやプリン、冷めたおじや、豆腐など)

安静に過ごすことで熱は数日で下がり、水疱なども7日程度で治癒する場合が多いです。

予防

予防接種などの特異的な予防方法はありません。
一般的な感染症予防である、手洗いうがいや消毒、混雑を避けることが大切です。
  • 手指は石けんと流水でよく洗いましょう。
  • プールでのタオルの共用はやめましょう。
  • 症状がある人は自宅でもタオルなどを共用しないようにしましょう。
  • おむつは適切に処理し、その後はしっかりと石けんと流水で手洗いをしましょう。

保育園・学校など 登園、登校について

ヘルパンギーナは感染症法において5類感染症の定点把握疾患に指定されています。また、学校保健安全法においては第三種学校伝染病に指定されており、「発熱や咽頭・口腔の水疱・潰瘍を伴う急性期は出席停止、治癒期は全身状態が改善すれば登校可」とされています。
しかし、症状が治っても発症後4週間ほどは便からウイルスが排出されており注意が必要なため、保育園によっては出席停止の期間を設けている所もあるようです。